研究内容 (updated 2024/05/04)

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hitoshi

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(1) 研究分野
(2) 研究分野のざっくりとしたイメージ
(3) 具体的にどのようなことに取り組んでいるのか
(4) その研究は社会にどのように役立ちそうなのか
の4つに分けて説明していきます.

(1) 研究分野
“スピントロニクス” という分野の研究に取り組んでいます.
いきなり “スピントロニクス” と言われてもピンとこない方の方が多いと思います.
時節ではスピントロニクスとは何か, 身近なもののイメージを用いて説明します.


(2) 研究分野のざっくりとしたイメージ

“電子” という言葉は聞いたことがある方が多いのではないかと思います.
原子核の周りをグルグル回っている “アレ” です.
原子核を太陽に例えると, 電子は太陽の周りを公転している惑星になります.

さらに, 実は電子は公転だけでなく自転をしていることが分かっています. (本当に惑星みたいですね)

ここで, 惑星と異なるのは “電子の自転の回転向きや回転軸の向きを操作できる” ということです.
地球の自転の向きや地軸の傾きを変えられるイメージです.

①この自転の向きや回転軸を上手に操作して誰かの役に立つものを作ろうとか②自転や回転軸の向きを変えられる物理的機構を解明しよう
というのがスピントロニクスという分野になります.

スピン(電子の自転) + エレクトロニクス(電子の有無) = スピントロニクス

というイメージです.

(物理に詳しい方の中には公転とか自転という表現が不正確だと反論したくなる方もいるかもしれません. ここではイメージの話をしているのでご容赦ください.)

(3) 具体的にどのようなことに取り組んでいるのか

先程, 電子は自転してること, その自転の向きや回転軸の向きを操作できることを話しました.
僕が今取り組んでいるのは主に回転軸の操作の方です.
少し難しい話になってしまいますが外部から磁場を印加すると回転軸を歳差運動(コマのような運動)させることができることが知られています.
歳差運動の図 (水色の矢印が回転軸を表す)

そしてこの歳差運動している回転軸の位相(角度)はそれぞれの電子でバラバラです.
それぞれの電子でバラバラ・・・

しかし特定の条件下で回転軸の位相(角度)を揃えられることが分かっています.
位相(角度)がそろった !

僕が取り組んでいる研究ではより多くの歳差運動している回転軸の位相(角度)を, より正確に揃えるためにはどうしたらよいかということを研究しています.


(4) その研究は社会にどのように役立ちそうなのか

様々な可能性が考えられますが, 僕が念頭に置いているのは次の2つの応用です.

①量子コンピュータ駆動のための高品質な磁場の生成
②脳と同じ仕組みで動くコンピュータの実現
の2つです.

まず①量子コンピュータ駆動のための高品質な磁場の生成についてです. (ここでいう量子コンピュータは量子ゲート型というものを指します.)
量子コンピュータは重ね合わせ, 量子もつれなどを用いることにより従来のコンピュータでは解けなかった問題を解けるようになることを期待されています.
しかし, 動作の正確性がボトルネックとなり商用化にはまだ時間がかかりそうというのが現状です.
詳細は省きますが, 量子コンピュータを正確に動作させる要素はいくつかあり, そのうちの1つが高品質な磁場の生成です. ここでいう高品質とは周波数の誤差が小さいということです.
先程のスピンの回転軸の向きを揃える技術を応用することで, 周波数の誤差が極めて小さい磁場を生成できる可能性が示されています.
高品質な磁場を生成できるデバイスを実現することにより, 量子コンピュータの正確性の向上に貢献できると考えています.

次に②脳と同じ仕組みで動くコンピュータの実現についてです.
近年AIを用いたサービスが急速な勢いで普及しています.
これらのサービスにより, 日々の生活がより便利になった, 仕事の効率が上がったと感じる人も多いのではないでしょうか.
その一方で問題となっているのが, 消費電力の増大です.
International Energy Agency (IEA)によるとデータセンターでの消費電力は2026年には2022年の2倍程度まで増加するとされています. またその増大にAIが大きな影響を持っていることも合わせて述べられています.
AIの消費電力の低減は急務の問題です.

ここでその問題の解決策として提案されているのが脳の仕組みを模倣したコンピュータの実現です.
人間の脳の消費電力は20W(72kWh)程度と言われています. 一方でOpenAI社のGPT-3が学習の際に使った電力は1200MWh(1200000kWh)を超えています. これは原発1基の発電力(約1000MWh)を上回ります.
脳の仕組みを模倣したコンピュータがAIの消費電力低減に向けて, インパクトフルな解決策となり得ると期待されている理由もここにあります.

また, スピンの回転軸を揃える技術を応用することで脳の仕組みを模倣したコンピュータが実現できる可能性が示されています.
脳の仕組みを模倣したコンピュータを実現することでAIの消費電力の低減に貢献できると考えています.
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